Q. ラボに参加してみて、ご自身で「一番大きく変わったな」と思うのはどのような点ですか。

「AIを使ったプロダクトが作れるようになった」という点です。
画像や数字など、データーさえあれば「予測する」「分類する」といったプロダクトを作ることができます。 ラボでは大学と共同で、「畑の作物を荒らす野生動物をAIで検知するシステム」を作りました。
元来、物が動いたときだけ撮影するカメラを使えば、畑に何がきたかはわかります。 ただ、このカメラを設置したところで、写る9割は動物以外です。 そこで画像データをAIに学習させて、野生動物を見分けられるようにしました。 この機能と装置を連動させ、「野生動物が写った時だけ通知し、威嚇する」ことを可能にしました。
また、市役所と共同で「公民館と併設したレストランの売上を、AIで予測するシステム」も作りました。 「天気」「曜日」「来場者数予測」などのデータをAIに学習させ、「次の日弁当がいくつ売れるか」が予測できるようにしました。 必要な食材の量が予測できるので、無駄な仕入れを減らせます。 食品ロスの削減を目指しました。

Q. AI技術が身に着いたことで、今後の就業先も変わってくるのでしょうか?

ネットワークエンジニアにとらわれない、チャレンジングな仕事に就けるようになります。
私はラボ参加前、「ネットワークエンジニア」の仕事をしていたのですが、この仕事について誤解を恐れずわかりやすくいってしまうと、「ネットワークをつなぐ」仕事です。 とても大変な仕事なのですが、ある意味「つながってしまえばおしまい」なところがあります。
AIを活用する現場も、例えばプロダクトを作る場合、プロダクトを生み出せば終わりにみえます。 ただ、AIはまだまだ新しい技術なので、一つプロダクトを作り上げれば終わり、というものではありません。 やればやるほど新しい発見があり、終わりがありません。 私はこの終わりのないチャレンジに大きなやりがいを感じているので、次は絶対にAIを活用する現場で仕事がしたいです。

Q. AIを活用する現場、最大の魅力はどのようなところですか。

ただのエンジニアではなく、エンドユーザーとお話をする立場で仕事ができることです。
実際にラボでシステムを開発してみて、「プログラムが打てるだけではプロジェクトはできない」ということを実感しました。 「何が一番ハッピーなのか」「どうしたらお客様をハッピーにできるのか」、考えるのはとても楽しかったです。
今まではエンジニアの思考で「いいシステムができればそれでいい」「早くて切れにくいネットワークが敷設できればいい」と思っていました。 しかしAIを活用したプロダクトを作る場合、"お客さんが望む"システムである必要があります。 「ビジネスとして何かを作り、売り上げが上がり、人が集まる」ということを疑似体験したことで、色んな人の立場を知り、考え方を理解できるようになりました。
この「お客様視点に立てるようになった」というのもラボに参加して変わったことの一つです。

Q. AIに携わる仕事に就くためには、どのような勉強が必要でしたか。

「Python(パイソン)」というプログラミング言語の学習です。
近年、AIを使って何かができるエンジニアはニーズが高まっていますから、市場価値も高まっています。 私も自分の価値を高めるべく、働きながらPythonを学んでいました。 世の中のAIの8~9割はPythonで書かれているからです。 しかし「働きながらAIを学ぶ」というのは、とても困難です。 無理ともいえるかもしれません。
今はいい教材も世の中にあふれていますから、なんとなく本を読んでわかった気になることは可能です。 テストデータを使ってプロダクトを動かしてみることもできます。 ただ、テストデータでは、うまくいくのが当たり前です。 個人の学習では結局「動いたけど、使えるかどうかがわからない」というところで止まってしまいます。
私の場合、この体感こそラボへの参画を決めたきっかけでした。

Q. ラボであれば体感した課題を解決できた、ということでしょうか。

実践的な学びを得て、AIを活用できるようになりました。
私が「個人でAIを学習するには無理がある」と思うのは、「発想ができない」からであり、「データがない」からです。 ネットワークエンジニアとして働いている以上、「実際の業務にAIを使う」という機会はありません。 Pythonを使ってAIを動かせるようになったとして、どのように使うか、という発想ができません。 ラボでは滝沢市の皆さんが抱えている課題が既にありますから、その課題をいかにAIで解決していくかを考えていく、まさに「発想」を学ぶことができました。
また、AIを使えるようにするには、大量のデータが必要です。 これは座学では絶対に得ることができません。 ラボでは滝沢市の皆さんから生のデータを大量にいただくことができますから、この点もクリアできました。 そして当然ですが、「学習時間の確保」と言う意味でもラボ参加は有意義でした。 大学の図書館を使えますから本も潤沢にありましたし、ラボでお金を出していただけるので必要なものもそろいました。 この点もとてもありがたかったです。

Q. ラボではどのような方と交流したのでしょうか。

岩手県内の経営者や企業管理職、市・県の職員の方、大学の准教授、研究所所長など多くの方とお話する機会がありました。
ラボにいる間、200以上の名刺を交換し、本当に多数の方とお話しする機会がありました。 ビジネスの考え方や、地域の歴史・課題や、自分の知らない業界のことを聞くこともできました。 エンジニアとして働いているだけでは出会えない方とたくさん会話できたことは、貴重であったと感じます。
実際にAIを活用した現場でも、多くの方にお世話になりました。 AIを活用したプロダクトは、現場を知らないと作れません。 事実、売れる弁当の個数を予測するシステムでは、現地でイベントがあると来場者数が変わってきますから、現場の状況を把握することが欠かせません。 このような状況下で、現地の方々は快くヒアリングに応じてくださいました。
コミュニケーションの取り方を改めて学べたのはもちろんなのですが、多くの気付きをいただくことができました。

Q. 今後、AIを使ってやってみたいことはありますか?

金融業界のシステムを作ってみたいです!
基本的にエンドユーザーに近いところで、AIを使って何か役に立つプロダクトを作れれば、と思っているので業界は問いません。
ただ、システム屋として長らく金融業界に携わっていたので、金融業界の課題解決に貢献したい、という思いはもっています。 株価や債券、FXなど投資関連の予測ができたらおもしろいな、というなんとなくの感覚もあります。
まずは実際のAIを活用した開発現場で、さらに腕を磨いていきたいです!

※当社グループは、今後も技術・技能社員の皆さんに『オープンアッパー』になってもらえるよう、サポートしてまいります。
※2023年4月インタビュー