考え方・方針

経済安全保障に起因する顧客企業の動向や新型コロナウイルス感染症を経て就労形態や価値観の多様化など、事業環境を取り巻く不確実性が高まる昨今において、リスク管理の役割がますます重要になってきていると認識しています。 環境・社会・ガバナンス側面におけるリスク対応については、その実効性を高めるために、マネジメントフローを当社グループの組織や事業に合わせて体系化しており、経営会議、サステナビリティ委員会、内部統制委員会、取締役会でのモニタリングや判断が出来るようにしています。

体制

リスクマネジメントにかかる体制は、当社(持株会社)が中長期も含めたリスクを年度単位で確認するものと、事業会社からの恒常的なボトムアップで確認するものの両面を設定しています。

年度単位のアプローチは、サステナビリティ委員会と内部統制委員会を通じたものです。 サステナビリティ委員会では人権、環境問題及び社会との共生等を考慮した持続可能な社会の実現のための機会とリスクについて統括管理・審議する中で、リスクマネジメントを行います。 内部統制委員会では、財務報告に係る範疇だけでなく全般的なリスクカタログを用いて外部環境の変化に応じた影響や可能性を評価して抽出しています。

いずれの委員会も、代表取締役会長兼CEOを委員長とし、代表取締役社長兼COO、常勤取締役及び委員長が指名する当社グループ役職員で構成しています。 また、これらの検討・評価の結果は取締役会に報告されます。

事業会社における恒常的なリスクマネジメントとしては、月次で開催あるいはチェックするコンプライアンス会議において、リスクとなり得る事項を事業会社毎に抽出して個別の対応施策やモニタリングを継続してリスクがコントロールできるように体系化された統制を行っています。 その他、「グループ会社管理規程」と「報告規程」を定め、当社への報告または承認を得ることを求め、リスクとなる事項の把握と対応指示を通じてマネジメントができるよう推進しています。

その他には、当社内部監査部が、グループ各社の業務活動全般における内部監査を実施するとともに、グループ各社は、当社の監査等委員及び内部監査部に対してリスク情報を含めた業務執行状況の報告を行うこととしています。

リスクマネジメント体制の概要

リスクマネジメント体制の図
リスクマネジメント体制の図
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危機管理体制

当社及びグループ各社の損失の危険の管理に関する規程その他の体制については、危機管理規程で、「経営危機」に直面した場合の対応についての基本方針、優先順位、対策本部の設置等を定めています。 危機発生時は代表取締役会長兼CEOが対策本部の長となり、総務および広報に係る人員を中心に、事業会社と連携した情報収集、確認を行ったうえで、対策の周知と徹底が可能となるよう定めています。 これにより、地震や火災等、大規模災害発生の場合を想定した社内組織体制・社内外連絡体制等を整え、万一の場合に備えています。

経営危機の範囲

  1. 役職員が正確な業務または内部統制を怠る等、会社の過失により取引先およびユーザーに多大なる損害を与えたとき
  2. 重大な労働災害を発生させたとき
  3. 火災、地震、風水害等の自然災害によって多大の損害を受けたとき
  4. 営業上きわめて重要な情報が外部に流失、漏洩したとき
  5. 重要な取引先が倒産したとき
  6. コンピュータ障害により営業上多大なる損害を顧客に与えたとき(または長期にわたり業務遂行が困難となるとき)
  7. 不慮の事件・事故により相当数の社員の生命または健康が危機にさらされたとき
  8. 経営幹部が誘拐または殺害されたとき
  9. 株式が買い占められたとき
  10. 不本意にして法律違反を犯し、その責任を問われたとき、もしくは行政処分を受けたとき
  11. その他会社の存続にかかわる重大な事案が発生したとき

リスクの特定とマネジメント

当社グループでは、リスク特定の基本のデータベースとしてリスクカタログを策定しています。 リスクカタログとは、外部環境や内部環境など当社グループを取り巻くあらゆる要因の中から想定される具体的な207のリスクを網羅したものです。 年1回のサイクルで内部統制におけるリスクカタログの検証と事業のリスク項目の抽出を行い、対策を要する重要な事項は当社の経営会議、取締役会で検討・決定しています。


特定方法とプロセス、
およびマネジメント

リスク特定にあたっては、まず対象範囲とするグループ会社の見直しを、財務報告に係る内部統制基本要領に基づき二つの側面から行っています。 一つは、連結売上高の95%をカバーする拠点(関係会社)とすることと、もう一つは重要な事業拠点の選定を連結売上高の3分の2を網羅する事業拠点とすることです。 その上で、具体的な207のリスクそれぞれについて、「発生可能性」と「財務的影響」の視点でリスク評価を行い、高中低の3段階に分類する評価(見直し)を行っています。

2022年6月期におけるリスク評価の見直し結果として、①新型コロナウイルス感染症拡大、②グループ統合による影響、③制度改変・環境規制に関わる項目、が見直しの観点として挙げられました。 この見直し結果に従い、リスクオーナー(各部署)が主体となり、リスクに対応する施策の検討や取り組みを推進しています。


主なリスクとその対応状況

事業等に関連するリスクのうち、重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりです。 当社グループでは、これらのリスクの存在を認識した上で、当該リスクの発生に伴う影響を極力回避し、また発生した場合に的確な対応を行うための努力を継続的に行っています。

主なリスクと内容 主な対応策と実施状況
新型コロナウイルス
感染症拡大
  • 顧客企業における休業や人員削減調調整など需要の減退(当社在籍社員数の減少や稼働率の低下)
  • さらなる感染拡大による顧客企業の活動への影響
  • 社員の経済活動を制限するような事態
  • 採用や営業、技術・技能社員のフォローアップ体制などで、一層のテレワークやオンライン面談の浸透など感染対策を個別の事業環境を考慮
気候変動・自然災害
  • 地震、津波、台風などの自然災害による一部地域での事業活動停止
  • 顧客企業の被害による就業不可事態が発生する可能性
  • 顧客企業が取引先選定基準にカーボンニュートラルへの取り組み要請
  • 気候変動や自然災害に関するリスク評価をサステナビリティ委員会を中心に実施し、リスク状況の変化や対応の検討のフローを体系化
  • 一定の影響が生じても他地域の拠点でバックアップが可能な体制やITインフラの整備
  • 購買品や販促品の環境性能を選定基準に適用、社用車の削減、資材の再利用等CO2低減への取り組みを推進
法的規制
  • 派遣や職業紹介事業に関連する法令違反(国内においては、労働基準法、労働者派遣法、職業安定法等)
  • 監督官庁の指導方針強化や当社グループの取り組みが派遣先で十分に反映されない状況
  • また、将来の関係法令の改正や監督官庁の指導方針の強化により、顧客企業が派遣や請負の活用を見直す事態となり需要が低下
  • 違反行為や事象が発生しないよう、業務フローにおける確認・牽制を行い、コンプライアンス会議を通じた定期的なモニタリングと未然防止への取り組みを推進
顧客情報管理
  • 顧客企業の機密情報の流出や不正使用等の事態が発生
  • 全社員に対して入社時及び定期的に、機密情報の取り扱いに関する指導・教育の実施
  • 業務監査やコンプライアンス会議を通じて情報管理の状況をモニタリングや検査
  • 顧客情報を扱うIT機器のアクセス制限や漏えい対策の実施
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